【症例】前歯の被せ物をセラミックにやりかえた治療
2025.06.27
治療内容 | セラミッククラウンへのやりかえ |
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期間 | 1ヶ月半 |
治療回数 | 3回〜5回(土台の状態によります) |
費用(施術当時の料金) | 66,000円×3本=198,000(税込) |
治療前の状態・主訴
患者様は、「前歯の不揃いな長さと色を治したい」との症状で来院されました。
また、歯ぐきのまわりが黒くなっていることも気にされていました。
治療前の写真を見ると、前歯の3本が白く目立っており、左右対称の高さになっていないことがわかります。
パノラマX線で確認したところ、前歯3本は過去に根管治療で神経を取り除いていました。
また、根管治療後に、歯の内部に金属を使用した「差し歯」であることがわかりました。
健康な歯の内部はやや黄色味がかった色をしていますが、今回のように黒く変色する理由として以下が考えられます。
1.歯の神経(歯髄)を取り除き、栄養の供給がなくなるため
歯髄は歯に水分や栄養を与えている組織です。歯髄を取り除くことで歯は乾燥し、くすんだ色になってきます。
2.詰めた材料による影響を受けるため
歯の内部に使用した金属が歯の色に影響を与えます。
今回の歯ぐきとの境目の黒い変色は、被せ物の形や色の問題だけでなく、神経を取り除いていることと内部に金属を使用したことが原因であると考えられます。
「差し歯」とは
「差し歯」とは、虫歯や外傷によって歯の大部分が失われたときに用いる人工の歯です。
歯根に対して心棒(ポスト)を差し込むことからそう呼ばれます。
冠(クラウン)は、歯の頭の部分全体を覆うようにかぶせる人工の歯です。
神経をとった歯や歯質の欠損が大きい場合には、「コア」と呼ばれる土台を入れてから、冠をかぶせるのが一般的です。
《コアに使用される材料》
・金属
・プラスチック(レジンコア)
・ファイバーコア
コアに用いる材料は、歯根の破折に大きく関わっているとされています。
「差し歯」に潜む破折のリスク
メタルコアの場合、薄く削られた歯根に過剰な力が加わると、歯が割れてしまうことがあります。
根が割れると、差し歯ができないため抜歯となります。
金属と比べ、ファイバーコアは曲げ強度が歯根に近く、歯根と一体化して「しなる」と言われています。
この性質によって、歯根の破折を防止すると言われています。
また、ファイバーコアはその色も天然の歯に近いため、金属よりも見た目が自然で美しく仕上げることができます。
永久歯が抜歯となる原因としては、主に以下の3つが挙げられます。
1位 歯周病 37.1%
2位 虫歯 29.2%
3位 破折 17.8%
このように3人に1人は歯周病が原因で抜歯している結果となっています。
2位の虫歯では、残っている歯の面積が少なく差し歯が不可能な場合、抜歯となります。
これらの疾患に続き、多いのが破折です。
今回の症例のように、内部の材質によって破折のリスクがいかに高いかグラフから読み取ることができます。
埋伏歯とは、親知らずの抜歯を示しています。
被せ物をやりかえる際、歯の変色を改善するために内部にある金属を取り除くべきかどうかが重要な点となります。
今回使用されているメタルコアはいずれも歯根の長さに対して、太く、長いことが画像からわかります。
また、コアを外す際に歯を削るため、歯根はさらに短く、薄くなってしまいます。
患者様の希望により、メタルコアは外さずに被せ物のみをやりかえることになりました。
治療詳細
1日目
入っている被せ物を除去し、土台の周囲に虫歯がないか確認していきます。
仮歯を作成し、長さや形といったご要望を確認しながら調整していきます。
2日目
型取りする前に、右上2番の古いプラスチックの下にある虫歯の治療を行いました。
また、今回は左上3番が大きく見えてしまうため、2番よりを少し削っています(患者様の同意を得ています)。
実際に使用した仮歯の見た目や噛み合わせを確認し、型取りを行っていきます。
3日目
できあがったセラミックのクラウンを装着していきます。
4日目
使用時の状態をお聞きし、必要があれば形の修正や噛み合わせの調整を致します。
治療後の様子
患者様からは「前歯を見せて笑えるようになった」と満足の声をいただけました。
主な副作用・リスク
噛み合わせの違和感:
・装着した直後は噛み合わせの高さや形態が合わず、違和感を覚える場合がある
クラウンの脱離、破損:
・外力によって外れることがある
・歯ぎしりがあると一部、またはすべてが欠けることがある
経年的な劣化:
・時間が経過してから歯とクラウンの間に二次的な虫歯ができるリスクがある
被せ物をやりかえる治療の際に必要なこと
今回はメタルコアの除去による歯根破折のリスクを考慮し、患者様と十分に相談した結果、安全性を優先してコアは除去せず、被せ物のみの交換を行いました。
前歯の被せ物をやりかえる際、唇や頬とのバランスを見ながら長さや形を調整していきます。
まず、仮歯の段階で理想的な形態に近づけていき、仮歯を付けた状態のまま型取りをします。
これは、歯科技工士に口腔内の状態をより正確に伝えるために参考模型として情報を提供するためです。
また、実際の歯の色調をカメラで撮影し、下の歯を含めて色調を合わせて作成いたします。
なお、保証期間については、装着してから3年間とさせていただきます。
ジルコニア単体やジルコニアセラミックを用いた被せ物もご用意しておりますので、詳細についてはお気軽に当院へお問い合わせください。
皆様のご来院をお待ちしております。
センター南デンタルクリニック 院長 吉竹絵里
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